市立豊中病院

診療科案内

肝胆膵外科 【主な疾患】肝疾患、胆道疾患、膵疾患について

肝疾患について

肝臓はお腹の右上に位置する腹腔内で最大の臓器です(大人の場合で1.0~1.5キログラム)。肝臓の解剖としては、まず左葉と右葉に分けられ、これらはさらに区域、亜区域という領域に分けられます。肝臓内には、3種類の血管(動脈、門脈、静脈)に加えて、肝臓で作られる消化液である胆汁の流れる道である胆管が複雑に絡み合う形で存在しています。肝臓は「生体の化学工場」と言われ、糖質、蛋白質、脂質などの代謝機能や種々の物質の解毒・排泄機能を持っています。また、胆汁という消化液の合成を行ったり、免疫系にも深く関係しています。手術が必要となる疾患としては原発性肝癌(肝細胞癌、肝内胆管癌など)、転移性肝癌、嚢胞性肝疾患、肝内結石症などがあります。疾患とその進行度は手術術式を決める上で大切な要素ですが、肝臓の場合、肝機能も手術術式を決める上で大変重要です。また術式によっては、腹腔鏡を用いた手術が施行可能な場合もあります。ここでは肝疾患に対する手術(肝切除)について以下に説明します。

肝切除の方法は、切除する範囲によって、部分切除、亜区域切除、区域切除、葉切除に分けられます。疾患によっては、肝切除に加えて胆管を小腸と吻合する再建手術が必要な場合があります。また術式によっては、胆嚢を一緒に切除する必要があります。肝臓はその一部が肋骨の下に隠れる非常に大きな臓器ですので、開腹手術の場合、手術の傷はある程度大きくなりますが、腹腔鏡手術では4~6個の小さな傷となります。手術時間は、術式により大きく変わりますが、短ければ3時間、長ければ10時間かかります。肝臓の手術は複雑な知識と技術を要する大手術ですので、肝臓の手術による死亡率は、以前に比べて非常に低くなってきましたが、それでもその危険性は他の手術に比べて高いとされています。術後の合併症としては、出血、胆汁が腹腔内に漏出する胆汁漏などがあります。非常に稀ですが、起こると生命の危険性が生じる肝不全もあります。手術術式や肝機能によりますが、術後の経過が良ければ1~3週間で退院となります。我々は約70例/年の肝切除を行っており、約3分の1の手術が腹腔鏡手術です。

胆道疾患について

胆道とは、肝臓で作られた胆汁という消化液が十二指腸に排出されるまでの通り道をいい、胆汁を流すための管である「胆管」、その途中で胆汁を一時的にためておく袋である「胆嚢」、十二指腸への出口である「十二指腸乳頭部(ファーター乳頭)」に分けられます。胆道の疾患としては、胆石症(胆嚢結石症、総胆管結石、肝内結石)、胆道癌、膵・胆管合流異常症などがあります。ここでは代表的な疾患である、1)胆石症、2)急性胆嚢炎、3)胆道癌について以下に説明します。

1)胆石症

胆道に石ができる病気を総じて胆石症といいます。石の存在する場所により、胆嚢にできる胆嚢結石、総胆管にできる総胆管結石、肝臓内にできる肝内結石に分類されます。胆石症の内訳は、約80%が胆嚢結石、約20%が総胆管結石であり、肝内結石は約1%とされています。総胆管結石は、そのほとんどが内視鏡にて取り除くことが可能であるため、手術となる場合は多くありません。胆嚢結石は、胆管との交通部を閉塞させることにより、右の肋骨の下あたりなどに痛みが生じます。痛みは脂っこい食事を食べた後に起こりやすいとされています。発作が起こる可能性は年に1~2%ですが、一旦発作を起こすとほとんどの方が発作を繰り返します。また、胆嚢炎や、総胆管に落ちた場合に胆管炎や膵炎を引き起こすこともあり、命に関わることがあります。このような症状のある胆嚢結石に対しては手術が必要とされています。

胆嚢結石をもつ患者さんでは、胆嚢に癌が含まれている率は約1~2%であり、胆嚢の癌化率は胆嚢結石をもたない場合と比較すると高い可能性がありますので、無症状の場合でも石が充満していて検査しても胆嚢が十分観察できない場合や、胆嚢の壁が肥厚していて癌の可能性がある場合は、手術が勧められます。また胆嚢結石症の他にも、胆嚢ポリープや胆嚢腺筋腫症など、手術が望ましいと考えられている疾患があります。手術としては、ほとんどの場合、腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術となります。手術中に開腹手術へ変更となる頻度は約1%です。手術の場合、重い病気を有していなければ入院は手術前日で、手術時間は約2時間です。翌日から水分や食事摂取が可能となり、手術後3~4日で退院となります。当院では約250例/年の腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術の手術を行っています。

2)急性胆嚢炎

胆嚢に炎症が生じた状態を急性胆嚢炎といいます。胆嚢がむくんで腫れ、炎症が進行すると胆嚢液が壊死し、腹膜炎を起こします。症状は初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに痛みの部位が右の肋骨の下あたりになり、次第に痛みの程度が激痛になります。原因のほとんどが胆石によるものですが、まれに胆嚢癌や胆嚢の捻転や奇形が原因となることもあります。治療としては、近年のガイドラインにて重症度に応じた治療が奨められています。上記1)胆石症で示した腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術が治療の1つとなりますが、重症度や合併する病気などの理由で保存的治療、ドレナージ術、開腹による手術が選ばれる場合もあります。当院では、腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術を積極的に行うよう努めており、約50例/年の腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術を行っております。手術中に開腹手術へ変更となる頻度は、さきほどの胆石症に対する手術よりは高く、約7%です。

3)胆道癌

胆道癌とは胆道にできる癌の総称で、肝臓外の胆管に発生する「胆管癌」、胆嚢に発生する「胆嚢癌」、十二指腸乳頭部に発生する「乳頭部癌」に分類されます。一方、肝臓内の胆管に発生した癌は肝臓癌として分類されています。手術に関しては、胆道癌に対する手術は開腹手術が基本で、原則腹腔鏡手術は行いません。手術術式は、癌のある場所や手術術式は疾患とその進行度によってさまざまです。具体的には、肝臓の近くに発生した胆管癌では、胆管だけでなく肝臓も大きく切除するのが一般的です。一方、十二指腸の近くに発生した胆管癌や乳頭部癌では、膵疾患に対する手術の1つである膵頭十二指腸切除を行います。胆嚢癌の場合、初期であれば胆嚢の切除のみで十分ですが、進行すれば癌の範囲に応じて切除する範囲が広くなり、胆嚢に加えて肝臓、胆管、膵臓の切除が必要になります。手術時間は、術式により大きく変わりますが、短いものでも4~5時間、長ければ10時間かかります。手術後の入院期間も術式によりさまざまですが、順調に経過すれば2~3週間です。術後合併症としては、切除する範囲に応じて肝切除に伴う合併症や膵切除に伴う合併症を起こす場合もあります。

膵疾患について

膵臓は胃の裏側・背骨の前側にある臓器で、体の右側から順に膵頭部、膵体部、膵尾部と呼ばれます。膵臓には、膵液を作り十二指腸へ分泌し食物の消化吸収を助ける働きと、インスリンなどのホルモンを血液中に分泌して血糖値を調整する働きがあります。手術が必要となる疾患としては膵癌、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)などの膵嚢胞性疾患、膵神経内分泌腫瘍などがあります。手術術式は疾患とその進行度によって異なり、さまざまな術式がありますが、ここでは代表的な手術術式である、1)膵頭十二指腸切除術、2)膵体尾部切除術について説明します。また傷が小さく体への負担が少ない手術として近年普及している腹腔鏡手術も、疾患や進行度、術式によっては施行可能な場合があります。

1)膵頭十二指腸切除術

膵頭部、胃の一部、十二指腸、空腸の一部、胆管の一部、胆嚢を周囲のリンパ節とともに切除します。切除する胃の範囲に応じて、「膵頭十二指腸切除術」、「亜全胃温存膵頭十二指腸切除術」、「幽門輪温存膵頭十二指腸切除術」の3種類の術式があります。切除した後は、残りの膵臓、胆管、胃を消化管と吻合する再建手術を行い、膵液、胆汁、食物を流すルートを確保します。この手術は消化器の手術の中で最も複雑な技術を要する手術の1つであり、手術時間は通常6~10時間かかります。手術後には術後合併症予防のため、多くのドレーンやチューブをお腹の中に留置します。術後の合併症として、早期のものでは膵液が漏出する膵液漏が多く、長期的なものでは糖尿病や消化不良、下痢などがありあります。術後の経過が良ければ3週間前後で退院となります。当院では約20例/年の膵頭十二指腸切除術を行っております。

2)膵体尾部切除術

膵頭部を残して、膵体部と膵尾部を脾臓や周囲のリンパ節とともに切除します。疾患とその進行度によっては脾臓を温存可能な場合もあります。この手術では、切除後に消化管を再建する必要はありませんので、通常3~5時間程度の手術時間となります。術後のドレーン留置や術後合併症については、1)の膵頭十二指腸切除術と同様です。術後の経過が良ければ2週間前後で退院となります。当院の手術数は約10例/年です。

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