市立豊中病院

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麻酔科-【豆知識】コントロールが難しい慢性痛

麻酔科 |【豆知識】コントロールが難しい慢性痛

2014年8月7日

「痛みは死よりも恐ろしい」とは、アルバート・シュワイツアー博士が残した言葉です。
皆さんは、「とんでもない、痛みよりも死ぬほうがよほど恐ろしい」と反論されると思いますが、痛みをコントロールできなかった時代には博士の言葉はまさに真実だったのです。

痛みには大きく分けて急性痛と慢性痛があります。急性痛は、身体の傷害や炎症によって患部組織で産生される発痛物質が原因となる痛みで、外傷や病気に伴う症状の一つといえます。難しい言葉では「侵害受容性疼痛」と言われ、外傷や手術後の痛みなどであり、創部が治癒するとともに局所の発痛物質の産生が減少して短期間に自然に軽快します。また、急性痛は消炎鎮痛薬や医療用麻薬(オピオイド)などが非常に有効で、コントロールが比較的容易な痛みです。また、がん性疼痛は少し複雑な痛みですが、侵害受容性疼痛の要素が大きく鎮痛薬を上手に用いることによってコントロールが可能になっています。

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一方、慢性痛は3~6ヶ月を超えて持続する痛みで、その多くが痛みを伝える痛覚伝導系の異常からもたらされるもので、痛みそのものが病気であるといえます。その特徴は、身体に痛み刺激が加わらない場合でも、また痛みを感じる部分で発痛物質の産生がなくても、痛覚伝道系の異常興奮が起こって痛みが発生することにあります。
厄介な慢性痛のひとつに神経障害性疼痛があります。神経障害性疼痛は、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、脳卒中後疼痛および脊髄損傷後疼痛などが代表的なものですが、一般的に極めて難治性です。慢性痛患者では痛みが長く続くとうつ状態や強い不安などを引き起こし、通常の日常生活が大きく損なわれてきます。しかし、現在のところ決め手となるような治療法はないのが現状です。麻酔科医が得意とする神経ブロックもほとんど役に立ちません。また、世界の製薬会社が慢性痛治療薬の開発にしのぎを削っていますが、決め手となるような有効な治療薬を見出せてはいません。最近発売されたプレガバリンはある程度有効ですが、残念ながら慢性痛の完全なコントロールをもたらすものではありません。最近、オピオイドが非がん性疼痛に積極的に用いられるようになってきていますが、その有効性にも限界があるようです。

神経障害性疼痛を始めとする慢性痛の発症メカニズムはきわめて複雑で、まだ十分に解明がなされていません。効果的な慢性痛治療薬の開発のために、詳細な発症メカニズムの解明が待たれます。

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